剣持整形外科におけるPRP療法への取り組みと歩み
PRP療法をご検討されている方へ
PRP療法は、患者さんご自身の血液を採取し、血小板を多く含む部分を分離・調製して、患部に投与する治療です。
剣持整形外科では、半月板損傷、変形性膝関節症、腱・靱帯・筋肉などの損傷に対する治療の選択肢の一つとして、PRP療法に取り組んできました。
このページでは、当院がPRP療法を導入するまでの経緯、半月板をできるだけ温存する治療への考え方、現在の診療方針についてご紹介します。
PRP療法は、すべての患者さんに適している治療ではありません。また、治療結果には個人差があり、症状の改善や組織の修復を保証するものではありません。
当院では、診察、画像所見、これまでに受けてきた治療、年齢、活動状況などを確認したうえで、通常の治療を含めた複数の選択肢をご説明しています。
剣持整形外科
院長 剣持雅彦
1.半月板をできるだけ温存する治療への関心
私は1996年に医師となり、杏林大学医学部付属病院を中心に、膝関節外科やスポーツ整形外科の診療に携わってきました。
当時は、損傷した半月板に対して切除が選択されることも多い時代でしたが、私はできる限り半月板を残し、その機能を維持する治療に関心を持っていました。
半月板には、膝に加わる衝撃を分散し、関節を安定させる役割があります。そのため、修復が可能な場合には、切除するのではなく縫合して温存することが、その後の膝関節の状態を考えるうえで重要になります。
大学病院勤務時代には、半月板修復を補助する方法の一つとして、患者さん自身の血液から作製するフィブリンクロットを用いた治療にも取り組みました。
一方で、作製される状態にばらつきが生じることがあり、より安定した方法がないかと考えるようになりました。
※撮影時期、撮影場所、同席者の肩書は、資料で確認できる範囲のみを記載します。
2.PRPとの出会い
2000年代初頭、海外のスポーツ整形外科学会に参加した際、関節鏡手術にPRPを応用する発表を聴講しました。
それまで取り組んでいたフィブリンクロットとは異なり、遠心分離によって血小板を多く含む血漿を調製し、治療に使用する方法でした。
その後、海外の学会や医学論文において、筋肉、腱、靱帯、半月板などの治療にPRPを応用する報告に接する機会が増えました。
ただし、医学的に関心のある治療であっても、十分な安全管理や法的な手続を整えずに実施することはできません。
診察から治療、その後の経過観察までを一つの医療機関で継続して行うためには、自院で必要な設備、職員教育、治療手順、衛生管理、記録管理を整える必要があると考えました。
私は2007年に群馬県太田市で剣持整形外科を開院し、日常診療と手術を行いながら、PRP療法を整形外科診療の中で適切に実施するための準備を進めました。
3.PRP療法を実施するための院内体制づくり
2013年頃から、医師、看護師、その他の職員による院内チームを設け、PRP療法を実施するための具体的な検討を始めました。
国内外の医学論文を確認しながら、採血方法、遠心分離の条件、血液の取扱い、作製手順、投与方法、衛生管理、記録方法、治療後の経過観察について検討を重ねました。
PRPは、遠心分離の方法や採取量などによって、その性状が異なる可能性があります。そのため、単に血液を遠心分離して注射するのではなく、一定の手順に基づいて作製・投与する体制が必要だと考えました。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律の施行後は、認定再生医療等委員会による審査を経て、再生医療等提供計画を厚生労働大臣へ届け出ました。
当院では、届出を行った再生医療等提供計画の内容に基づいてPRP療法を実施しています。
再生医療等提供計画
- 変形性膝関節症に対するPRP療法
計画番号:PB3180007 - 腱・靱帯・筋肉などの病変に対するPRP療法
計画番号:PC3150033 - 半月板修復術に併用するPRP・PRF療法
計画番号:PB3150009
※再生医療等提供計画は、認定再生医療等委員会の審査を経て厚生労働大臣へ届け出る制度です。国が治療効果を認定または保証する制度ではありません。

4.PRFを用いた半月板修復への取り組み
半月板修復術では、液体であるPRPを損傷部分にとどめることが難しい場合があります。
そこで当院では、血液中のフィブリンを利用して膜状・ゲル状に調製するPRF(Platelet-rich fibrin)に着目しました。
PRFは、形状を保ちやすいため、半月板の損傷部分に配置し、その上で半月板を縫合する方法への応用が考えられます。
当院では、PRFと液状のPRPを半月板修復術に併用する方法について、必要な審査と届出を行い、診療に取り入れてきました。
また、治療経過を評価し、PRP・PRFを併用した半月板修復について、英語論文や学会での報告を行っています。
ただし、これらの学術報告は、一定の条件に該当する患者さんを対象とした結果です。すべての半月板損傷で同様の結果が得られることを示すものではありません。

当院の論文・学会発表一覧
半月板修復術にPRP・PRFを併用した研究(2018年)
変形性膝関節症に対するLR-PRP治療の研究(2020年)
軽度~高度の変形性膝関節症に対するLR-PRP連続投与の研究(2022年)
半月板修復術におけるPRF・PRPの追跡研究(2024年)
変形性膝関節症に対するPRPの最適な投与回数・頻度の研究(2025年)
ACP®(LP-PRP)による変形性膝関節症治療の研究(2026年)
5.変形性膝関節症に対するPRP療法
半月板修復術後の患者さんを継続して診察する中で、半月板だけでなく、軟骨病変、骨の変化、関節内の炎症などを総合的に評価することの重要性を改めて認識しました。
その後、変形性膝関節症に対するPRP関節内投与について検討し、認定再生医療等委員会の審査を経て、再生医療等提供計画を届け出ました。
変形性膝関節症に対するPRP療法では、痛みや関節機能の改善がみられる場合がありますが、効果の程度や持続期間には個人差があります。
また、PRP療法によって、失われた軟骨が元の状態に戻ること、変形性膝関節症が治癒すること、将来の手術を必ず回避できることを保証するものではありません。
変形の程度や症状によっては、PRP療法よりも、薬物療法、装具療法、リハビリテーション、関節内注射、手術など、別の治療が適している場合があります。
6.当院におけるPRP療法の診療方針
- PRP療法だけを優先することはありません
- 当院では、PRP療法を選択する前から、変形性膝関節症などに対する通常の整形外科診療を行っています。
- 運動療法やリハビリテーション、体重管理、日常生活の指導、内服薬・外用薬、装具、各種注射などを行い、その経過を踏まえてPRP療法が選択肢となるかを検討します。
- PRP療法の実施後も、症状と医学的必要性に基づいて、通常の整形外科診療を継続します。
治療後の経過を確認します - PRP療法は、投与して終了する治療ではありません。
- 当院では、治療後も診察を行い、痛み、腫れ、関節の動き、歩行能力、日常生活やスポーツ活動への影響などを確認します。
- 必要に応じて、レントゲン、超音波、MRIなどの画像検査を行う場合があります。
適応がない場合には、ほかの治療をご説明します - 診察の結果、PRP療法が適していないと判断することがあります。
- その場合には、PRP療法を行わない理由をご説明し、通常治療の継続、手術を含むほかの治療、他の医療機関への紹介などを検討します。
7.PRPの作製と安全管理について
当院では、患者さんご自身から採取した血液を、院内の定められた設備と手順により処理し、PRPを作製しています。
作製から投与までの各工程について手順を定め、衛生管理、機器管理、職員教育、記録の保存を行っています。
患者さんご自身の血液を使用する治療ですが、治療に伴うリスクがなくなるわけではありません。
治療前には、治療内容、期待できる可能性、治療の限界、費用、主なリスクについて説明し、同意をいただいたうえで実施します。
8.治療回数・期間・費用
PRP療法は公的医療保険が適用されない自由診療です。
治療回数と期間
変形性膝関節症に対しては、症状や病態に応じて、4週間程度の間隔で4~6回を目安に実施する場合があります。
腱、靱帯、筋肉などに対する関節外への投与は、病変の部位、損傷の程度、治療後の経過により、必要な回数が異なります。
診察後に、予定する回数と期間をご説明します。
費用
【2026年○月現在】
- 関節内へのPRP投与
1回 77,000円(税込) - 腱・靱帯・筋肉など関節外へのPRP投与
1回 55,000円(税込) - 診察、画像検査、治療前の血液検査など
〔別途費用が発生する場合は、標準的な金額を記載〕
治療の効果には個人差があり、期待した改善が得られない場合であっても、実施した治療について費用がかかります。
料金は変更される場合があります。受診時に最新の料金をご確認ください。
9.主なリスクと副作用
PRP療法では、次のような症状や合併症が生じる可能性があります。
- 採血部位の痛み、出血、内出血
- 採血時の気分不良、めまい、血管迷走神経反射
- 投与部位の痛み、腫れ、熱感、発赤
- 一時的な症状の増強
- 出血、内出血
- 感染
- 治療を行っても症状が改善しない可能性
- 症状に応じて、追加の治療や手術が必要になる可能性
治療後に強い痛み、著しい腫れ、発熱、その他の異常を感じた場合には、速やかに当院へご連絡ください。
10.これからも経過を確認し、医学的に検証していきます
PRP療法は、従来の治療をすべて置き換える治療ではありません。
一方で、通常の保存治療だけでは十分な改善が得られない患者さんにとって、治療の選択肢の一つとなる可能性があります。
どのような患者さんに適しているのか、どのような方法や回数が適切なのか、効果がどの程度持続するのかについては、現在も検討が続けられています。
当院では、一人ひとりの患者さんの経過を丁寧に確認し、その記録を今後の診療に生かすとともに、必要な倫理的手続を経たうえで、学会や医学論文を通じた学術報告に取り組みます。
新しい治療であるという理由だけで過大な期待を持たせることなく、一方で、治療の可能性を最初から否定することもなく、医学的根拠と実際の診療経過の両方を確認しながら取り組んでいくことが、当院の役割であると考えています。

「生きるために医師でいるのではなく、医師であるために生きなければいけない。」
剣持整形外科
院長 剣持雅彦
お問い合わせ
PRP療法の適応、治療回数、費用などについては、診察の際に医師からご説明します。
剣持整形外科
電話番号:0276-25-2537
